株の配当金の確定申告っていくらからしなくちゃいけなの?
そもそも「確定申告しない」を選択した人でも申告した方が得なこともあるって聞いたけど、どういうこと?
株の譲渡益や配当金の申告は、特定口座(源泉徴収あり)で運用していれば、通常、確定申告は必要ありません。
ですが、申告した方が有利な場合もあります。
有利な場合は、過去の株売却での譲渡「損」があり確定申告していた場合、今年の譲渡「益」を申告することで、所得税と住民税が戻ってくる場合です。
税理士の中にもこういった有利判定をし、申告のアドバイスをする方がいますが、実はこのような有利な場合でも、こんな苦情をよく聞きます。
- 国民健康保険料(後期高齢者医療保険料)が上がった
- 医療費負担割合が2割から3割に増えた
この他にも実は皆さんは実感していないだけで、高額療養費が上がってしまっている人もいます。
実は、税理士は所得税には詳しくても、意外に社会保険のことは詳しくありません。
なので、社会保険料である国民健康保険についてまで考慮してアドバイスをくれる税理士も少ないのが現状です。
そもそも、税理士は社会保険の専門家ではないので、そこまで考えが及ばないのもしょうがありません。
そこで、この記事ではあまり知られていない、住民税や社会保険料などを考慮に入れながら、「損」しない方法をできるだけわかりやすく説明していきます。
- 申告方法
- (上場株式)配当金で失敗しない申告方法
- (上場株式)売却益で失敗しない申告方法
- 申告方法を選択するにあたって、留意すべきこと
この記事を書いている人 -WRITER-

りん:FP(元税理士事務所勤務)
税金や社会保険などのわかりづらい内容を、できるだけわかりやすく説明しています。その他、アラフォーからチャレンジしているブログ運営や、ペットについても発信しています。
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株売却益・配当所得の申告方法について
株譲渡益や配当所得の申告方法については、以前までは、所得税・住民税で同じ申告方法によらなければなりませんでした。
しかし、平成29年の税制改正により、所得税・住民税で、別々の申告方法を選択する事ができるようになりました。
これにより、
- メリット:税負担が軽減
- デメリット:申告(課税)方式の選択や手続きの複雑化
になりました。
この記事では、選択の複雑化を踏まえ、「どの選択肢が一番適切か」慎重に検討できるようにまとめました。
ただ、手続き(申請方法)は市区町村によって違いますので、お住まいの各市区町村にお問い合わせ下さい。
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この章では、まずは、一般的な申告方法を見ていきましょう。
一般的な申告方法には次の3つの方法があります。
- 申告分離課税
- 総合課税
- 申告不要制度
申告分離課税
申告分離課税とは、他の所得とは分離して税額を計算し、確定申告によって納税する課税方式です。
株譲渡益や配当所得の場合、所得税(15.315%)・住民税(5%)が、一律に課税されます。
総合課税
総合課税とは、すべての所得を合計し税額を計算し、確定申告によって納税する課税方式です。
これは、配当所得のみ選択できる課税方式です。
超過累進税率(所得が増えるとその分、税率が上がる方式)により課税されます。
申告不要制度:特定口座(源泉徴収あり)
申告不要制度とは、株譲渡益や配当金受取時に税金が引かれている(源泉徴収されている)ので、申告しないことを選択できる制度です。
株譲渡益や配当所得の場合、所得税(15.315%)・住民税(5%)が、一律に課税されいるので、申告自体がいりません。
この制度のメリットは2つ。
- 確定申告で申告する手間が省ける
- 株に関する収入を他の所得に合計する必要がないので扶養の判定に有利
特定口座で源泉徴収「あり」を選択していれば、確定申告する必要がないだけでなく、その年の所得に加えずに済むというメリットがあります。
所得に加えなくていいのはわかるけど、メリットがよくわからないよ。
誰かの扶養になっている場合はメリットだらけだよね。
例えば、専業主婦の方が、株で1,000万円儲けたとします。
確定申告してしまえば、儲けた1,000万円を申告することになるので、所得が48万円を軽く超えてしまい、配偶者控除が受けられなくなってしまいます。
一方で、申告不要制度を使えば、申告していないので、配偶者控除を受けることができます。
すごいね。1,000万円も儲けても扶養になれるんだ!
注意事項
今回の話題は、あなたが、
- 会社の社会保険に加入されている方なのか
- 自営業などで国民健康保険に加入されてる方なのか
によって、大きく変わります。
自分がどちらなのか、キチンとご理解の上、選択してください。
また、この様に立場により有利判定が違うので、ご自分が有利でも他の方には不利になる事もあります。
他の方に伝える時は、くれぐれもお気を付けください。
よく、井戸端会議で聞いてきた話でやると、全然違っていたってことあるよね。
間違った事、聞いてきちゃったんだね。
そうとも言えないらしいよ。
そもそも前提条件がその人とは違っていたみたい。
そうなんです。
人それぞれ条件が違うのに、その違いを考えずに情報だけが先回りして損をされている方が非常に多いです。
そこで、この記事では、色々な場合を想定しています。
(上場株式)配当金について
それでは、まずは、上場株式の配当について見ていきましょう。
上場株式の配当には、下記の3つの申告方法がありました。
- 申告分離課税
- 総合課税
- 申告不要制度
この3つの選択肢を「税金面」と「社会保険面」でそれぞれ見ていきます。
税金面での考察
税金面では、所得税と住民税の見地から考えていきましょう。
所得税
所得税については、上記表①を見ながら説明していきます。
上記表①をみると、課税総所得金額が、900万円以下までは、総合課税を選択した方がお得になっています。
課税総所得金額が900万円を超えると、一転、申告分離課税もしくは、申告不要制度がお得になっています。
「課税される全ての所得金額」の合計額(総額)のことをいう。
「課税される全ての所得金額」とは、全所得から所得控除を引いた金額です。
所得税申告書で言うと、赤枠の部分になります。
- 900万円以下の場合・・・総合課税が有利
- 900万円以上の場合・・・申告分離課税・申告不要制度が有利
住民税
それでは、住民税について見ていきましょう。
住民税は一律の為、簡単です。
- 総合課税・・・一律10%
- 申告分離課税・申告不要制度・・・一律5%
よって、住民税については、申告分離課税もしくは、申告不要制度を選択するのが有利と言えます。
ここで先程の話がでてきます。
平成29年の税制改正により、所得税・住民税で、別々の申告方法を選択する事ができるようになりました。
なので、所得税は「総合課税」、住民税は「申告不要制度」を選択することも可能です。
ただし、ここで注意したいのが、確定申告書を提出すると、自動的に住民税を申告したことになってしまうということです。
先程の例で言うと、「総合課税」で確定申告書を提出したままでは、住民税も「総合課税」で申告したことになってしまいます。
それじゃあ、まずいよね?
まずいよね。住民税で「申告不要制度」を選択し直す必要があるので気を付けないとね。
待って!税金だけで判断しないで!
社会保険料の有利判定をしてから選択して下ださい。
それでは、早速、社会保険について見ていきましょう。
社会保険での考察
社会保険の話をする際に気を付けなければならないことは、自分の加入してる社会保険が何かという事です。
例えば、会社員であれば、会社の社会保険組合に加入している人がほとんどです。
また、自営業の方であれば、国民健康保険に加入している人がほとんどかと思います。(75歳以上の後期高齢者の方は、国民健康保険の扱いと同じになります。)
井戸端会議で間違った情報になってしまう原因の1つにもなります。
「会社員だから(社会保険の)健康保険だ」と決めつけず、(社会保険の)健康保険なのか国民健康保険なのか、キチンと事実確認して下さいね。
それでは、ケースごとに説明していきたいと思います。
自分が会社員で会社の社会保険組合に加入している場合
この方は、どの申告方式を選んでも問題ありません。
理由は、社会保険料は(住民税を起点に計算されているのではなく)会社からの収入を基礎に算定しているからです。
ただし、会社をやめて、再就職しない予定の方、もしくは来年も就職できないかもしれない方は、申告不要制度を選択する事をおすすめします。
国民健康保険料は前年の所得が算定基準になります。
株式譲渡益や配当金を申告して所得が増えてしまうと、国民健康保険料も上がってしまいますのでくれぐれも気を付けてください。
また、会社をやめて、配偶者や親の扶養になる方も扶養範囲内の金額に注意して選択して下さい。
自分が会社員に扶養されている場合(専業主婦(夫)・学生など)
この方たちは、一定の収益が出ると、税金面も社会保険面も、扶養から外れなければならなくなりますので、注意が必要です。
安全策を取るなら、申告不要制度を選択してください。
【関連記事】扶養の範囲については下記記事で詳しく解説しています。
>>【主婦・学生必見】株売却や配当金で扶養が外れない方法を伝授
自分が国民健康保険料(後期高齢者保険料含む)を払っている場合
申告不要制度を選択するのが一番いいと思います。
理由は、総合課税や申告分離課税を選択すると、住民税が増える可能性があるからです。
国民健康保険料は、住民税を元に計算されています。
このことから、住民税が増えるという事は、国民健康保険料も増えるという事が言えます。
(上場株式)売却益について
上場株式の譲渡には、下記の2つの申告方法があります。
- 申告分離課税
- 申告不要制度
この2つの選択肢より選ぶ事になります。
税金面での考察
株売却益に関しては、正直、どちらを選択しても問題ありません。
強いて言うなら、どちらを選択しても問題ないのなら、手間が省ける分、申告しない方がいいかと。
社会保険での考察
配当所得と同じになりますので、ここでは、説明を省きたいと思います。
まとめ:申告方法の選択は、扶養や社会保険料も考慮して決めよう
この記事では、株譲渡益や配当金の申告方法について記載しました。
極論を言えば、「申告不要制度」が一番お得になります。
ただ、「過年度の株譲渡損と今年の株譲渡益を相殺したい」とか、「今年の譲渡損を配当所得と相殺したい」と考えると、他の申告方法を選択せざるを得ません。
そんな時は、返してもらいたい所得税のみ申告し、住民税は申告しないという方法も選択できます。
ご自分の社会保険などの兼ね合いを見て、かしこい選択をして下さい。
また、保険料負担割合も、住民税によって変わってきます。
元々、3割負担の方は影響ありませんが、1割負担や2割負担の方は、株売却益や配当所得を申告する事によって、3割負担になることもあります。
それに伴って、高額医療の限度額も上がる可能性もあります。
そう言えば、住民税を申告しない申告方法、聞いてないよね?
面倒くさくなっちゃったんじゃない?
違います。
住民税を申告しないやり方は、市町村によって違います。
お住まいの市町村に確認して下さい。
- 株譲渡益や配当所得の申告は、所得税・住民税、それぞれ有利な申告方法が選べる
- 国民健康保険料にも関わってくる人は、住民税の申告は慎重に
- 保険料割合が、1割負担や2割負担の人は、住民税の申告は慎重に
- 過去の損失と相殺したり、今年の利益と損失を相殺する人は住民税の申告は慎重に
- 確定申告で所得税を申告すると、自動的に住民税も所得税と同じ方法で申告したことになる
- 所得税と違う申告方式を選択したい場合は、必ず住民税も申告しよう
- 住民税の申告方法は市町村によって違うので、必ず確認しよう
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