相続放棄をすれば親の借金を相続せずにすみますよね?
財産が土地建物と少額の貯金しかないので、子供達に相続放棄してもらうことにしました。これで妻は安心して老後を暮らせますよね?
実はこれらは相続放棄の失敗例です。
借金のある親の相続放棄をすれば親族にその借金が降りかかりトラブルになります。
子供達が相続放棄しても、夫が法律上の親族がいない限り、夫の財産はすべて妻のものにはなりません。
ですが、対策を練ることでこれらのことをすべて解決することができます。
このように、「相続放棄」には、知らないと大変なトラブルが潜んでいます。
そこでこの記事では、よくある失敗例を元に「相続放棄」について、そして「相続放棄」のメリット・デメリットを解説していきます。
- 相続放棄について
- 相続放棄のメリット・デメリット
- 【意外と多いので注意!】相続放棄の失敗例
この記事を書いている人 -WRITER-
りん:FP(元税理士事務所勤務)
税金や社会保険などのわかりづらい内容を、できるだけわかりやすく説明しています。その他、アラフォーからチャレンジしているブログ運営や、ペットについても発信しています。
スポンサーリンク
相続放棄とは|相続放棄のメリット・デメリット
相続放棄とは
相続放棄とは、すべての財産(プラスの財産やマイナスの財産の全部)を相続せずに放棄することです。
相続放棄は、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てることにより行わなければなりません。(詳しくは相続の放棄の申述 | 裁判所に記載されています。)
他の相続人や利害関係者に「私は相続を放棄する」と宣言しただけでは、相続放棄の効力はないので気を付けて下さいね。
つまり、生前に「相続放棄をする」と宣言しても何の効力もないということです。
また、相続放棄は原則、撤回できませんので、慎重な検討も必要になります。
相続放棄のメリット
相続放棄のメリットは以下のとおりです。
- 借金などのマイナスの財産を引き継がなくてもすむ
- 遺産分割協議などの相続人同士の話し合いに参加しなくてすむ
相続放棄をすればマイナスの財産も相続放棄できます。
つまり借金がチャラになるということなので大きなメリットと言えましょう。
ただし、実は借金が消える訳ではありません。注意点も多いので次章の失敗例で解説していきます。
また、相続放棄をしたことで、相続人の立場を放棄したことになり、遺産分割協議に参加しないですみます。
遺産分割協議は通常、揉めたりし、かなりの労力と精神力が必要になります。
相続が絡む話し合いでは、普段、仲のよい兄弟も、子供の頃の恨みつらみがぶつかることも少なくありません。
そういった、いざこざから逃げられるのも大きなメリットと言えるのではないでしょうか。
相続放棄のデメリット
一方、相続放棄には意外に知られていないデメリットも多いです。
- プラスの財産を引き継ぐことができない
- 一度、相続放棄をすれば撤回できない
- 他の親族に迷惑かける可能性がある
相続放棄をすれば、現金や預金などのプラスの財産も相続できません。
最近は、ネットバンキングや株のネット取引などがあり、相続放棄してそれらの財産に気が付くこともあります。
「借金が多いと思って相続放棄したのに、ネット証券の残高が思いの外多かった!」と言って、一度、相続放棄したことは原則、破棄できません。
こういったネット関係で築き上げた財産は、家族にも内緒にしていることも多く、また例え、知っていたとしてもパスワードなどがわからず、全容を知るまでに時間がかかることもあります。
相続放棄は、3ヶ月以内にしなければなりません。
ただでさえ、悲しみの中、さまざまな手続きをしている最中に、こういった家族が知らない財産までなかなかたどり着けません。
そうならないためにも、自分の死後、家族が財産を見つけやすくなるよう、エンディングノートなどにキチンと書きとめておく必要があります。
また、相続放棄をすることによって、親族に迷惑がかかる場合があるので注意が必要です。(失敗例で詳しく解説しています。)
【意外と多い】相続放棄の失敗例
相続放棄については、皆さん、知っているようで知らないことが多く、実は失敗例が多いのが現状です。
特に財産が少ない方は、「自分には関係ない」と、相続のことをあまり研究せず、突っ走ってしまう方も多いと思います。
そこでこの章では、相続放棄で注意すべきことを、日常起こりうる相続放棄の失敗例を元に、わかりやすく解説しています。
- 債権者に「相続放棄」の旨を伝えれば相続放棄できると思っていた
- 相続放棄を申し立てたが相続放棄できなかった
- 母親にすべて相続させようと相続放棄したら新たな相続人が出てきてしまった
- 借金が多く相続放棄したら、親族に借金の取り立てが来てしまった
- 相続する前に相続財産を使ってしまい、相続放棄ができなくなってしまった
かなり具体的に記載しました。それでは1つ1つ見ていきましょう。
失敗例①
債権者に「相続放棄」の旨を伝えれば相続放棄できると思っていた
これで安心と思っていたのも束の間、数ヶ月後に借金催促の電話が・・・。
さて、どうしてこのような状況になってしまったのでしょうか?
理由は、「裁判所に相続放棄の申し立て」をしていなかったからです。
相続放棄は他の相続人や債権者に相続放棄の意思を伝えただけでは効力がありません。
前章でお伝えしたとおり、自分が相続をしたことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てることにより行わなければなりません。
今回のケースでは、債権者に「相続放棄」の意向を伝えただけで、手続きをしておらず、よって借金返済の義務は相続人にある状態になってしまっています。
これが、相続放棄の申し立て期限内であれば、間に合いますが、期限を過ぎてしまった場合は、借金返済の義務は消滅しませんので注意が必要です。
失敗例②
相続放棄を申し立てたが相続放棄できなかった
相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申し立てを行いましたが相続放棄できませんでした・・・。
相続放棄にはさまざまな書類が必要になります。
書類に不備があり、再提出に間に合わなければ、相続放棄ができません。
相続放棄の申し立てはなるべく早くしましょう。
とはいえ、相続放棄するかしないかの判断は、相続財産の把握がまず必要です。
どうしても間に合わないようであれば、熟慮期間の延長を申し立てましょう。
ただし、申し立てたからと言って必ず延長になるとは限りません。
ですので、相続放棄の可能性がある場合は、司法書士さんに依頼するのが無難です。
会社を経営されている方は顧問税理士さんにお願いすれば司法書士さんを紹介してもらえます。
もし、そういったツテがなければ、いい相続がおすすめです。
「いい相続」の運営は、1984年創業の出版社である株式会社鎌倉新書が行っています。東証一部上場会社なので安心です。
失敗例③
母親にすべて相続させようと相続放棄したら新たな相続人が出てきてしまった
母親が安心して老後を暮らせるよう、子供達は相続放棄しましたが、その結果、親族から相続財産を要求されてしまった・・・。
このケースは、遺産が多い人も少ない人もどちらにもトラブルになるケースです。
遺産が多い方は税金対策で、非課税枠が多い配偶者にまず相続させて、その配偶者が亡くなったあと、子供達で相続することもあります。
「土地建物しかない」とか「少額の現預金しかない」ような遺産が少ない方は、配偶者の老後の生活の為に、配偶者にすべての遺産を相続させることがあります。
このケースは、どちらにもダメージを与えますが、どちらかと言うと、遺産が少ない方に深刻な失敗例です。
今回は次のような例で具体的に見ていきましょう。
上の図の関係でいうと、相続人は、被相続人の配偶者と相続第一順位の子2人になります。
その内、子2人が相続放棄をすると、子2人は相続人ではなくなります。
子どもが、被相続人の配偶者である母親の老後の安定した生活の為、相続放棄して、ほっと一息していたところに、他の親族から財産の分割請求がきてしまうケースです。
こうなってしまう原因は、第一順位の相続人(子)が相続放棄することによって、第二順位の直系尊属が相続人となり、全相続財産の1/3を受け取る権利が出てきてしまったからです。
また、第二順位の直系尊属がいない場合は、第三順位の兄弟姉妹が相続人になり、全相続財産の1/4を受け取る権利が出てきてしまいます。
つまり、子が相続放棄をしてしまった結果、本来の目的である「配偶者に全財産を」という趣旨からかけ離れた結果になってしまいます。
どうしてこのような事態になってしまったのか・・・。
ここが法律の難しいところですが、相続放棄は相続人の権利を放棄することを意味します。
つまり、相続人の権利を放棄したことにより、相続人がいないものとされます。ここで言えば相続人は相続第一順位の「子」です。
子が相続放棄したことから、相続上は「子」がいないものとされるので、実際に子がいない夫婦同様、相続第二順位に相続の権利が移ります。(相続第二順位の直系尊属がいない場合は第三順位の兄弟姉妹に権利が移ります。)
今回のケースのように、配偶者に全財産を相続させたい場合は、
- 被相続人が遺言書でその旨明記しておく
- 子が相続放棄せず、遺産分割協議で全財産を配偶者に相続させる旨決める
のどちらかの方法をとれば、いちいち家庭裁判所に申し立てをすることもなく解決する話でした。
この場合は、申し立ての手間をかけて、「配偶者に全財産を」とは程遠い結果を招いてしまった最悪のケースになります。
被相続人が「配偶者に全財産を遺贈する」という遺言書を書いた場合でも、子が相続放棄をしてしまうと、相続第二順位の人は「遺留分侵害額請求」ができ、相続財産が遺言書どおりには相続されなくなりますので注意して下さい。)
失敗例④
借金が多く相続放棄したら、親族に借金の取り立てが来てしまった
被相続人の相続財産を調べたら、借金が思いのほか多く、被相続人の配偶者と子が相続放棄をしました。
その結果、借金の取り立てが親族に来てしまい、親族トラブルに発展してしまいました。
このケースも失敗例③と同様に、相続放棄してしまったため、配偶者と子が相続人の立場を失い、第二順位の父母(父母が亡くなっていた場合には第三順位の兄弟姉妹)が相続人になってしまった結果に起こるケースです。
借金が多い場合に相続放棄する際は、次の相続人になりうる人に必ず連絡を入れましょう。
失敗例⑤
相続する前に相続財産を使ってしまい、相続放棄ができなくなってしまった
被相続人死後、自分が相続するであろう金銭を自分の急な支払いに使ってしまった。
その後、被相続人の多額の借金が判明し、3ヶ月以内に相続放棄の申し立てをしたが却下された。
このケースのように、相続財産を自分のちょっとした支出に使ってしまった場合や相続財産を売却してしまった場合は、「相続した」と判断され、相続放棄はできませんのでくれぐれも注意しましょう。
まとめ:相続が発生したら、すぐに相続財産のチェック!そして自己判断せず必ず専門家に相談しよう
この記事で見てきた相続放棄の失敗例はすべて、相続人の知識不足によるものです。
とはいえ、十分な相続の知識を持っている方は、専門家以外にいないのではないでしょうか。
ですので、普段から、そして何か不幸があった際は、すぐに、
- 相続財産の把握
- 専門家に相談
の2つのポイントをおさえましょう。
最後にこの2つのポイントについてざっと記載します。
相続財産の把握
相続税の申告は相続人の死後10ヶ月以内ですが、相続放棄の申請は3ヶ月以内にしなければなりません。
相続放棄をするかしないかの判断は、すべての財産を把握した後でしかできません。
その財産の把握にさえも様々な手続きが発生します。
特に、今はスマホ時代。
ネットバンキングなどのネット取引をしていることを知らない相続人は、判断を誤る可能性もあります。
ましてや、親しい人の死の悲しみの中で、お葬式や死亡の届け出、財産の把握のための書類集めなど、やることは山ほどあります。
また、若い方でも急に事故に会うかもしれません。死亡にまでいかなくても意識不明状態が続いたり、事故の後遺症で判断能力がないと判断されれば、その人の財産も把握しづらくなります。
そうならないためにも、今からでも、自分が万が一の時に財産が把握できるよう、何かしらメモでも残すことをおすすめします。
ただし、スマホのメモ機能に残すとスマホを解除するのにも時間がかかる場合があります。
そもそも、スマホにそんな情報があるとは思わないかもしれません。
ですので、いざとなったら誰でも目に止まるところにメモするか、相続人に「自分に何かあったら、○○を見てくれ」と伝えておくのがいいと思います。
エンディングノートや手帳や日記帳のわかりやすいところに記載しておくと相続人もすぐに把握できますね。
専門家に相談
相続財産を法定相続分どおりではない配分で相続を考えている場合は、念の為、専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄の失敗例にもあるように、専門家でないと見落とすポイントがある場合があります。
また、思いもよらぬ相続資産(マイナスのものも含む)がある可能性もあります。
ネット経由のものや若い方の中にはビットコインなどの暗号資産があるかもしれません。
そういった財産を把握する手間や、把握できたとしても解約する手間もかかります。
そういったことは専門家に依頼するとスムーズに手続きができます。
こうした相談を無料でしてくれたり、専門家を紹介してくれるサービスもあります。
いい相続の運営は、1984年創業の出版社である株式会社鎌倉新書が行っています。東証一部上場会社なので安心です。
相続に関する手続きは、死亡した方の財産に関わることなので、手続きも複雑です。
ネット取引が日常になった現代では、便利な反面、財産把握もより複雑化してしまいました。
その上、今回ご紹介したようなちょっとした失敗が大きな問題になることもある手続きです。
また、相続税の申告についても、これらの財産の申告漏れは脱税行為と認定されてしまいます。
ですので、
- 早めの手続き
- わからないことは専門家に必ず聞く
この2つを意識して、悔いのない相続にして下さい。