事業を継いでくれている娘婿に自分の死後に会社の権利を相続させたいです。苗字も継いでくれているのでできますよね?
本記事ではこんな疑問にお答えします。 先に結論ですが、
法定相続人になるには、養子縁組が必要です。
ただし、養子縁組にはデメリットもあり。専門家に相談し慎重に決断する必要があります。
おそば屋さんや定食屋さんには、娘さんのお婿さんが主で営業しているケースも多いです。
こういった飲食店では娘さんも一緒に働いている場合も多いですが、工場や会社などでは、娘さんは専業主婦でお婿さんだけが働いているケースも。
でも、相続になればお婿さんには相続権はありません。
つまり、お店や会社が他の兄弟のものになってしまう可能性も。
お店や会社を分裂させず、円滑に事業継承するには、相続対策が欠かせません。
本記事では、このような悩みを、親しみやすく、わかりやすくするために、サザエさん一家のマスオさんを例に解説しました。
この記事を書いている人 -WRITER-

りん:FP(元税理士事務所勤務)
税金や社会保険などのわかりづらい内容を、できるだけわかりやすく説明しています。その他、アラフォーからチャレンジしているブログ運営や、ペットについても発信しています。
法律関係の話は、特に慎重に対処しないと、ほとんどの場合、「こんなはずじゃなかった・・・」と後悔ばかりつのります。
ネットやテレビの話と違うということもよくあります。
それは、どうしてか…。
理由は3つ。
- そもそも情報が間違っていた
- 自分のケースには当てはまらない情報を入手していた
- 言葉尻だけとらえていた
こういったことは、情報の発信者と受け手の、どちらか、又は、両方に十分な知識がないことにより起こります。
後で、後悔しない為にも、是非、専門家に相談する事をおすすめします。
法定相続人と法定相続とは
話をわかりやすくする為、「サザエさん一家」を例にしたいと思います。
法定相続人とは
法定相続人とは、民法で定められた相続人の事をいいます。
ここで大事なのは、「民法」という言葉です。「弁護士」が扱う分野です。
その他に、「税務」でも、こういう言い方をします。「税務」は税理士が扱う分野です。
大事なのは、今、「民法」の話をしているのか、「税務」の話をしているのかをきちんと区別することです。
情報が錯綜してしまうのは、この区別をキチンとしていなからだよね。
この話は、「民法」の話なのか、「税務」(税金)の話なのか、キチンと意識しよう!
それではこれから、サザエさん一家を例に、法定相続人の話をしたいと思います。
お父さんの波平さんが死亡したとします。
その場合の「法定相続人」と「法定相続分」は以下のとおりです。
子(サザエ):1/6 (1/2×1/3)
子(カツオ):1/6 (1/2×1/3)
子(ワカメ):1/6 (1/2×1/3)
妻の法定相続分は、半分。残りの半分は、子が平等に分けます。
マスオさんはもらえないんだね。
法定相続分とは
法定相続分とは、遺産を「民法」が決めたとおりの割合で相続することです。(前項参照)
一方で、指定相続分というものもあります。これは、遺言などで、相続分が決まるものです。
では、相続分は、どうやって決めるのでしょうか?
それは下記の①~③の順番で決めます。
【相続分の決め方】
①遺言書どおりに決める(指定相続分)
②話し合いで決める
③法定相続分で決める
ここは、さらっと説明したいと思います。
①遺言書どおりに決める
遺言書があれば、ほぼほぼ遺言書どおりに遺産は分割されます。
「遺留分の侵害」があった場合は、遺言書どおりに分割されない事もあるので、「ほぼほぼ」と書きました。
②話し合いで決める
①の遺言書があったとしても、「遺留分の侵害」があった場合、そして、遺言書がなかった場合は、話し合いで決めます。
③法定相続分で決める
①の遺言書がなく、②の話し合いで決まらなければ、法定相続分で決めます。
遺言書がなければ、必ず、法定相続分でわけなければならないと思っていたよ。
話し合いで解決すれば、法定相続分どおりに遺産を分割しなくても大丈夫です。
嫁・婿が遺産をもらう方法
それでは、嫁や婿(サザエさん一家で言えば、マスオさん)が遺産をもうら方法をあげていきたいと思います。
嫁・婿が遺産をもらう方法①遺言を残す
遺言を残すのが一番いい方法だと思います。
この遺言、気が変われば、何回も書き直せます。万が一、何通も遺言書が出てきた場合、有効な遺言書の最新のものが採用されます。
メリット
- 強制力が強いので、すんなり相続が進む
これが非常に重要です。 もし、遺言がなく、話し合いでとなると、親族との壮絶な話し合い(「遺産分割協議」)に出席しなくてはなりません。
かわいそうだよね。
デメリット
- 有効な遺言書をつくらないと無効になる
- 包括遺言だと、親族との壮絶な話し合いになる
きちんとした遺言書を作らないと、その遺言が無効になります。
せっかく、思いを込めた遺言書もその思いどおりにならないことにもなりかねないので、これだけはしっかり記載しましょう。
遺言の文言によって、分割の方法が、2種類があります。
特定のものを遺贈すると明記した遺言書
例えば「マスオさんに、現金1,000万円を遺贈する」などの文言があるもの
包括的に〇割を遺贈すると明記した遺言書
例えば「マスオさんに、遺産の2割を遺贈する」などの文言があるもの
包括遺言の場合、ざっくりと2割となっているので、どの財産を渡すかで親族との壮絶な話し合いが必要になります。
誰もが、換金性の高い相続財産や後で化ける(値上がりする)財産を欲しがります。
どの財産をもらうかで相続トラブルになることも多いので注意しましょう。
マスオさん(嫁・婿)の為にも、なるべく、特定遺言にしましょう。
嫁・婿が遺産をもらう方法②養子縁組をする
養子縁組をする方法もあります。
メリット
- 養子縁組をすることにより、法定相続分の主張ができる
先程の例で表すと法定相続分は次の様になります。
子(サザエ) :1/8 (1/2×1/4)
子(カツオ) :1/8 (1/2×1/4)
子(ワカメ) :1/8 (1/2×1/4)
養子(マスオ):1/8 (1/2×1/4)
マスオさんも、誰にも文句を言われずに、遺産分割協議に参加でき、権利を主張できます。(普通養子の場合)
マスオさんは波平さんの養子になっても、実の親の法定相続分も主張できます。
マスオさん、自分の親の相続分ももらえるなんて、すごい!
デメリット
- 遺産分割協議に出席しなければならない
- 養子縁組をすると解除するのが大変になる
「婿養子」という言葉が一人歩きしますが、男性側が女性側の「苗字」を名乗っても「養子」にはなっていないので、相続権はありません。
女性も同様、男性側の「苗字」を名乗っても夫の親の相続権は発生しませんよね。
それと同じです。
本当での「婿養子」になるには、養子縁組をする必要があります。
ですが、養子縁組には親子同様、簡単に解消できないというデメリットもあります。
例えば、家の商売を継いでもらいたいので、婿に来てほしいと、養子縁組をしたとしましょう。
お婿さんと経営方針などの理由で、折が悪くなり「決別」したとしても、養子縁組を解除することは簡単にはできません。
嫁・婿が遺産をもらう方法③死亡保険金の受取人にする
死亡保険金の受取人にする方法もあります。
メリット
- 原則として遺産に含まれない
- 遺産分割協議に出なくてもいい
実は、法律上では、死亡保険金を渡すのが一番簡単で、発生する問題も少ないかもしれません。 何故なら、原則として遺産に含まれないので、誰も文句が言えないからです。
【関連記事】【相続対策で有効な生命保険】一時払い終身保険のメリット・デメリット
デメリット
- 相続税が課される場合がある
ここが、法律と税務の違いです。
法律上は、遺産として含まれませんが、税務上は、遺産とみなされ課税されます(みなし相続財産)。
そして、相続権のない人が受け取った場合、相続税は少し高くなります。(2割増し)
嫁・婿が遺産をもらう方法④生前贈与
生前贈与として、先に遺贈することもできます。
メリット
- 遺産分割協議に出なくてもいい
お嫁さんやお婿さんに生前贈与された財産は、遺産分割協議の対象になりません。
デメリット
- 贈与税が課される
こちらは、生前贈与された時に、贈与税が課されます。
以下の人は、相続人にはなれません!
- 被相続人(ここでは波平さん)を殺したり、詐欺や脅迫によって、遺言書を書かかせた場合
- 被相続人を虐待した場合
まとめ:嫁・婿に相続する場合は、専門家の意見を聞いてキチンと対策を練ろう!
いかがでしたでしょうか?
問題がわかりやすくなるよう、かなりざっくりと、そしてかいつまんでお話ししました。
それでも、今回記事にした内容をすべて理解できないと思います。
中途半端な知識で色々と決めればそれだけ、後で、後悔する可能性が高くなります。
こういった問題は、「法律」は弁護士、「税務」は税理士に相談しましょう!
どちらか一方とお話しすれば、適切な先生を紹介して下さいます。
親族の心情も関係する、大切な決断ですので、専門家とご相談の上、決断する事をおすすめします。