税込経理と税抜経理って、どっちがいいの?
得とか損とかある?
この記事ではこんなお悩みを解決します。
先に結論!
ただし、有利・不利があるので実情に合わせて選ぼう!
- 税込経理と税抜経理の概要
- 税込経理と税抜経理の仕訳
- 税込経理と税抜経理のメリット・デメリット
- 税込経理と税抜経理を選択する際の注意点
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税込経理・税抜経理の概要
消費税の会計処理方法には、税込経理と税抜経理があります。
ここでは、会計処理方法を実際の数字を使って説明しながら、どちらが得か、利益面から見ていきたいと思います。
税込経理の概要
税込経理とは、売上や経費を消費税額を含めて仕訳する方法です。
例えば、売上が10,000円、仕入が8,000円(消費税率10%とする)とした場合の仕訳と決算仕訳は、次の通りです。
期中
(現 預 金)11,000円/ (売 上)11,000円
(仕 入) 8,800円/(現 預 金) 8,800円
期末:決算仕訳
(租 税 公 課) 200円/(未払消費税) 200円
税込経理では、期末に、納付の場合は「租税公課」(費用)、還付の場合は「雑収入」(収益)で損益を調整します。
つまり、期中は消費税も損益に影響しているので、正確な利益は把握できません。
「今年は利益が出た!」と喜んだのも束の間、決算仕訳をしたら、「赤字になっていた(:_;)」ということもあります。
また、税込経理は、決算整理(決算仕訳)をするまで、納付すべき消費税の金額がわかりません。
こちらも、決算仕訳をしたら、「納付する消費税額が思った以上に多くてびっくりした」ということが結構あります。
税抜経理の概要
税抜経理とは、売上や経費を消費税額を含めないで仕訳する方法です。
例えば、売上が10,000円、仕入が8,000円(消費税率10%とする)とした場合の仕訳と決算仕訳は、次の通りです。
期中
(現 預 金)11,000円/ (売 上)10,000円
/ (仮受消費税) 1,000円
(仕 入) 8,000円/(現 預 金) 8,800円
(仮払消費税) 800円/
期末:決算仕訳
(仮受消費税) 1,000円/(仮払消費税) 800円
(未払消費税) 200円
税抜経理では、期中も期末も「仮払消費税」(資産)、「仮受消費税」(負債)、未払消費税(負債)でもわかるように一切損益に影響していません。
税込経理は、期中に消費税が損益に影響してしまっているのに対し、税抜経理は、期中も期末も、消費税は一切損益に影響しません。
つまり、税抜経理は、消費税が期中も損益に影響していないので、正確な利益をいつでも把握することができます。
また、税抜経理は、期中いつでも納付すべき消費税の金額の予想がつきます。
納付すべき消費税の金額は、「仮受消費税-仮払消費税」で算出することができます。
税込経理と税抜経理の影響
ここでは、税込経理と税抜経理が与える影響について見てみましょう。
1年で、先程の仕訳の取引しかなかった場合の決算書の損益決算書(PL)を作ると下記のとおりになります。
税込経理方式 | 税抜経理方式 | |
---|---|---|
売上 |
11,000円
|
10,000円
|
仕入 |
8,800円
|
8,000円
|
売上総利益 |
2,200円
|
2,000円
|
租税公課 |
200円
|
0円
|
当期純利益 |
2,000円
|
2,000円
|
この表からわかることは次の通りです。
当期純利益
どちらの会計処理をしても利益(損失)は同じになります。
つまり、納付する税金も同じということになります。
期中の状態(売上総利益部分)
それでは、期中の状態を見てみましょう。
この表でいう期中の状態は、商品仕入時と商品売上時の2つしか取引がないので「売上総利益」で見ることになります。(給与や家賃、支払手数料などの販売管理費がある場合は、「営業利益」などになります。)
売上総利益は税込経理では2,200円、税抜経理では2,000円となり、税込経理の方が200円儲かっているように見えます。
しかし、税込経理ではまだ払っていない「消費税」という費用を差し引く前の金額になっています。
この200円を引いた金額が本来あるべき売上純利益になります。
つまり、税込経理では決算仕訳をするまでは正しい損益を把握することができないんです。
個人事業主や小規模法人では、この期末に計上する費用の金額(租税公課)が少ないので、そんなに問題になりません。
しかし、売上が多い大規模法人は、必然的に期末に計上する費用の金額が多くなり、期中の会社の状態が正確に読み取れません。
このことからも、大企業ほとんどが税抜経理を選択しています。
税込経理・税抜経理のメリット・デメリット
税込経理と税抜経理のメリット・デメリットは表裏一体です。
ですので、わかりやすいように項目ごとに表にしてみました。
税込経理方式 | 税抜経理方式 | |
---|---|---|
会計処理 | 簡単 | 複雑 |
特別償却 | 有利 | 不利 |
期中の損益 | 把握しづらい | 把握しやすい |
減価償却の特例の判定 | 不利 | 有利 |
交際費 | 不利 | 有利 |
それではそれぞれ見ていきましょう。
会計処理
会計処理は税込処理の方が簡単です。
税抜処理は、1つ1つ消費税を分解して仕訳する必要がありますので手間がかかり面倒です。
ただし、今では、会計ソフトが自動で税抜処理をしてくれます。
よって、税込経理でも税抜経理でも、昔ほど大きな差はなくなりました。
特別償却
法人税の節税対策として、「特別償却」や「特別税額控除」という特例があります。
この特別償却の金額は取得価格になります。
例えば、100万円(税込110万円)の機械を購入した場合の取得価格は、
税抜経理では、100万円
となり、税込経理で処理した方が10万円多く経費計上できます。
期中の損益
先程もお話ししたとおり、税込経理で処理した損益は消費税を加味しています。
よって、決算整理をするまで(期末の処理をするまで)は正しい損益になっていません。
一方、税抜経理では、仕訳のつど、消費税を除外していますので、期中いつでも正確な損益を把握することができます。
減価償却の特例の判定
個人事業主の青色申告や、法人税には、減価償却の特例があります。
この特例を受けるためには、10万円未満、20万円未満、30万円未満と、取得原価が判定基準になります。
先にお話しした「特別償却」同様、この取得原価も、
税抜経理の場合は税抜金額
になります。
もし、95,000円(税抜)のPCを買った場合、税抜処理では「10万円未満の特例」を使えても、税込経理では、104,500円となり「10万円未満の特例」を使うことができません。
交際費の判定
法人税で適用される「交際費の損金計上限度額である800万円の判定」も、減価償却の取得原価の判定と同様に、税込経理の方が金額が多くなります。
限度額ギリギリの法人は注意が必要です。
この判定は、個人事業主や交際費が年間800万円いかない法人は考慮する必要はありません。
また、交際費の判定では、1人あたり5,000円以下の飲食等は、交際費ではなく会議費や福利厚生費として処理できます。
この5,000円ラインも、税込経理は税込みの金額、税抜経理は税抜きの金額での判定になります。
なんかいろいろ特例が出てきてわからないんですが・・・。
特例については、国税庁のHPで調べて下さい。
ここでは、特例の判定基準の金額は、「税込経理では税込金額、税抜経理では税抜金額なんだ。」とざっくり理解して下さい。
まとめ:消費税の会計処理は会社の実情にあったものを選択しよう。
消費税の会計処理は、一定の場合を除いては、税込経理でも税抜経理でもどちらを選択しても構いません。
一定の場合って何ですか?
実は、免税事業者は税込経理しか選択できません。
なので、売上が少ない個人事業主や法人は必然的に税込経理になります。
また、税込経理、税抜経理どちらでも選択できる課税事業者(消費税の申告が必要な事業者のことをいいます)は、税込経理、税抜経理をいつでも変更できます。
ただその際に注意したいのが、会計処理を変更すると、売上や費用、そして利益の前期との比較の精度が落ちます。
どうしてですか?
税込経理は消費税が入ってしまう処理ですが、税抜経理は消費税を除外した処理でした。
前期・当期ともに売上高100万円でも、
前期が税込処理であれば、前期の売上高は110万円
当期が税抜処理であれば、当期の売上高は100万円
になります。
同じ、100万円の売上高でも、消費税の会計処理方法によって、売上の金額が変わってきてしまい、正確な前期比較はできません。(経費も同じです。)
ご自分が会計処理をする場合は、この記事でお話しした点を踏まえ、税込経理をするのか税抜経理をするのか選択することをおすすめします。
もし、判断が付きにくいようであれば、顧問税理士に相談して下さい。
顧問税理士がいると、こういったちょっとしたこともアドバイスしてくれます。
顧問税理士は、節税対策などもしっかり指導してくれます。
大切なお金を手元に多く残すには専門家の知恵が必要です。
税理士については下記で記事にしています。
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